健康チャンネルマガジン 特集記事Vol.4 免疫力UPに効果あり!?笑いが持つ底知れぬパワー 健康チャンネルマガジン 特集記事Vol.4 免疫力UPに効果あり!?笑いが持つ底知れぬパワー

健康チャンネルマガジン 特集記事Vol.4
免疫力UPに効果あり!?
笑いが持つ底知れぬパワー

2021年1月27日健康チャンネルマガジン
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ウイルスや細菌から、私たちの体を守ってくれる免疫。ここ数年で注目が高まっていますが、“笑い”が免疫力をアップさせるのに効果的であることはご存じですか? 今回は、なぜ笑うことが免疫力アップに効くのか、笑いと免疫力の関係性を研究する東京家政大学教授の大西淳之先生に伺いました。

この記事のポイント!

  • ・免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがある
  • ・作り笑いでもOK、たった1時間で免疫機能が活性化
  • ・日常に「笑い」を取り入れて、健康の下地を確かなものに

体を守る2つの免疫機能とは?

——「免疫」や「免疫力」という言葉を日常的に使っているものの、実際のところ体の防御システムといった認識しかないのですが……。免疫機能の働きなど基本的なことを教えていただけますでしょうか?

大西 人間を守る大きな免疫系には、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがあります。「自然免疫」を大まかに説明しますと、外から入って来たウイルスや細菌を「自分のものじゃない」と認識した時に免疫細胞が異物を攻撃することで働きを抑える仕組みです。 一方の「獲得免疫」とは、「自然免疫」が異物を破壊することによって作られた抗体が、同様の異物が体内に侵入した時にすぐに反応して攻撃するものです。たとえば、風疹など一度かかった経験があると、もうかからないと言われる感染症がありますが、これは「獲得免疫」の働きによるものですね。 「自然免疫」が「自分のものじゃない」と認識した異物を全て攻撃対象にするのに対して、「獲得免疫」は細胞が記憶している特定の異物に反応するという違いがあります。

——激しい運動をすることでも「免疫力」が低下すると聞いたのですが、それはなぜですか?

大西 よく、フルマラソンの大会に出場した後は風邪をひきやすいと言われますが、そのことを示す研究報告もあります。フルマラソンのような激しい運動を行うと筋肉の細胞が壊れるためです。 筋肉細胞が壊れることで、通常は核内など細胞の中にあるDNAやRNAなどが細胞の外に出てしまいます。その結果、免疫細胞に異物として認識されて攻撃を受けてしまうのです。 つまり、体に侵入した異物ではなく自分自身を攻撃してしまいます。そのため、免疫力が低下してしまい、風邪をひきやすくなってしまうのです。

笑う門には福来たる!?
笑いと免疫力の関係性について

——先生が研究されている「笑い」と免疫機能の関係について教えていただけますか?

大西 10数年前から研究者の間で、神経系の機能と免疫系の機能の直接的な関係性が注目されているんですね。 また、楽しいとか辛いといった感情が免疫細胞に作用するメカニズムも少し分かってきました。その中で私は実験を用いて、「笑い」がもたらす「免疫」への影響や健康効果を研究しています。

——どのような実験が行われ、どのような効果が見られたのでしょうか?

大西 いくつかの実験を実施したのですが、まず一つは2型糖尿病患者の方にご協力いただいて、食後血糖値と「自然免疫」の代表であるNK細胞(がん細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見し、攻撃を仕掛ける細胞)の変化を測定しました。 実験は2日間にわたって行いました。まず初日は患者さんに食事をとっていただいた後に大学の講義を聞いていただき、2日目は初日と同じ食事の後に漫才のライブを観ていただき、それぞれ1時間後の数値を測定したんです。

「講義」に比べて、「笑い」が食後血糖値の上昇を抑制していることがわかる。

大西 通常、2型糖尿病患者の方は食後に血糖値が上昇するのですが、漫才のライブを観た後は数値の上がり幅を抑えることができました。

免疫細胞の活性状態を測定したデータ。縦軸は細胞の活性状態、横軸は時間の経過(1時間後)を示したもの。グリーンのゾーンが適正内。時間の経過とともに免疫細胞の活性が適正化していくことがわかる。

※調査データは大西先生ご提供

大西 2つ目の表は免役細胞の活性についてです。グリーンのゾーンが適正数値を示しているのですが、笑う前と後を比べると、NK細胞活性、NK細胞数、リンパ球数がそれぞれ適正化されていることがわかると思います。 免疫細胞の活性が強すぎると自分を攻撃してしまい、弱すぎると免疫力を低下させてしまいます。つまり、適正状態にあることが望ましいんです。 これらの実験から、笑うことによって体の中で変化が起きることが分かります。
漫才を観ることで脳が楽しいと感じ、その情報が免疫細胞に働きかけています。通常ならば数日単位で行われる細胞の働きが、わずか1時間程度で行われているのです。

——「笑い」に関連して、他にどのような実験があるのでしょうか?

大西 健常者を対象に、コメディ映画を観てゲラゲラ笑った時に消費されるカロリーを測る実験があります。吸った酸素と吐き出した二酸化炭素の量を測ることで、どれだけ代謝が活発になったかを測ったのです。 その結果、1日のうち、トータル15分ぐらいゲラゲラ笑うと10〜40キロカロリー程度消費することが分かりました。 これがどれくらいの消費に相当するかというと、体重50キロぐらいの女性が家の中で立ち仕事や掃除機がけ、雑巾がけを10分行なった際の消費カロリーと同程度なんです。 単純計算ですが、1日15分程度の「笑い」を毎日続けると、1年に2キロ相当の脂肪を消費することに。「笑い」には軽度な運動の要素もあるのです。

感情のない「作り笑い」でも、
筋肉が動けばストレス緩和に効果あり!

——「笑い」が軽度な運動と考えた場合、「クスッ」と笑うよりも「ガハハ」と笑った方が効果は高いのでしょうか?

大西 消費カロリーを考えた場合、「ガハハ」と笑う方が効果は高いですね。声に出して笑うのは連続的に息を吐いている行為と似た部分があるので、横隔膜を上下させることになります。息を吐くと血圧が少し下がり、副交感神経の活動が促されるのです。 副交感神経系が優位になるとストレスの緩和につながるとも言われているので、精神的な部分で良い作用も考えられますね。

——やっぱり「免疫力」を適度に保つには楽しく笑うことが大切なのでしょうか?

大西 そこが難しいところで、「笑い」の質や頻度にもよると思います。一方で免疫機能の調節以外でも、「笑い」が引き起こす利点はあります。たとえば、赤ちゃんは視覚の機能が未発達な段階でも、母親に対して笑顔を見せます。これを「エンジェルスマイル」と呼ぶのですが、これは楽しくて笑っているわけではなく生存本能によるもの。 笑顔が母親の母性本能をくすぐり、感情と体の応答がリンクすることで母乳が出やすい状態を作り出すわけです。大人になっても、そういう表情を作ることで、人間関係を良好にしようとしますよね。

——感情を持った笑顔ではなく、笑うという表情だけでも何らかの効果があるということですか?

大西 はい、これはまた別の実験なのですが、お箸をくわえるだけで、自然な笑いと同じようにストレス応答を緩和することもわかっています。 お箸を口に向かって縦にくわえると、目の周りの眼輪筋は動きません。いわゆる「目が笑っていない」状態になるんですね。ところが、お箸を口に向かって横にくわえると眼輪筋と頬の周りの大頬骨筋も同時に動き、より自然な笑顔になります。 実際にストレス応答にどのような影響があるのかも実験しました。
連続的に暗算をやらせると、一般的なストレス反応として血糖値が上がることで心拍数も上昇するのですが、その後、お箸をくわえてストレス反応の数値が正常に戻るまでの時間を調べたところ、お箸を横にくわえて眼輪筋と大頬骨筋の両方が同時に動いている表情のほうが早くストレス状態から回復しました。 つまり、作り笑いをするだけでもストレスからの脱却を早める効果があるということがわかったのです。

——先生のお話を聞いて、改めて「笑う」ことが心と体の健康につながることが分かりました。

大西 ただ誤解していただきたくないのは、「笑い」で病気が治るということではなくて、自分の免疫力を適切に調整して健康に近づけるということ。健康の下地をより確かにしていくものだと考えているんです。 「笑い」の先にあるのは、気持ちと体のリラックス効果。それがストレスからの脱却につながり、結果として私たちの心と体にも良い影響を及ぼすのだと思います。

監修

大西淳之

大西淳之(じゅんじ)

筑波大学大学院博士課程生物工学学際カリキュラム修了。博士(学術)。専門は生化学、精神栄養学。米国立衛生研究所(NIH)留学。2010年より、東京家政大学家政学部栄養学科教授。笑いや瞑想、「食」がもたらす 心と体の相互作用について研究を行っている。

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